1.Wi-Fiを速くして家中みんなを快適に!

パソコンもスマホもインターネットに接続しなければ役に立たないこの時代において、無線LANルーター(Wi-Fi親機)は最も重要な周辺機器の一つだ。パソコンやスマホは無線通信で親機と接続し、そこからインターネット回線へとつながっていく。もし、その無線通信が遅かったらどうなるのか。結果は悲惨だ。

◆遅い親機は不幸の始まり!最新規格は10倍速い!

無線通信が遅ければ、ウェブサイトからファイルをダウンロードするのに長く待たされる、各種のストリーミング動画の視聴にも支障が出る。高画質(HD)の動画は大量のデータを送る必要があり、途中の無線通信が遅いと画質が粗くなったり、途切れたりすることがある。家族の誰かがネットでHD動画を視聴すると、ほかの端末の通信速度が落ちることもある。

無線LAN通信の規格であるIEEE(アイトリブルイー)802.11には複数の種類があり、新しいものほど高速。例えば、ひと昔前に主流だったIEEE802.11nの通信速度が150M~450Mbpsなのに対して、最新11acでは866M~1733Mbpsと、規格値だけでも4~10倍も速くなっている。まして、11nより古い11gや11a54Mbpsと論外の遅さ。

ところが、こうした古い規格の親機を使っている人は意外に多い.あるアンケートでも、4割以上が150Mbps以下の11n11gなどの親機を使用中だった。

◆時代に合わない古い規格は即!アップグレードするべし!

「ネットがもたつくのは、電波の状態が悪いからで、改善の余地はある」と考えている人もいるだろう。だが、11nも含めて古い規格の親機では、多少改善できたとしても、もはや周りのハードやサービスが遅い無線通信を許さない環境になっている。

例えば、家にはパソコンだけでなくスマホやタブレット、AV機器にゲーム機といったWi-fiが必須の機器がどんどん増えているこうした機器が一斉に無線通信をしたら、古い親機はパンクしてしまうだろう。

「高画質のストリーミング動画を楽しみたい」と1ギガクラスの高速インターネット接続サービスヘの切り替を検討している人もいるだろう。ところが、これも古い規格の親機を使い続けていては意味がない。パソコンやスマホと親機の間の遅い無線通信がボトルネックとなり、高速回線の速度をまったく生かせないからだ。

そこで、親機を最新11ac規格に対応した製品にアップグレードしよう。最近のパソコンやスマホは11acの高速通信に対応しているため、ネット利用のさまざまなシーンで格段に快適になる。1Gbps以上の高速インターネット接続サービスも、11ac対応の親機があって初めてメリットを生かせる。通信が速くなるだけでなく、つながりやすくなることも期待できる。

◆最新機器は数千円で購入可能!入れ替え作業もカンタン!

中には「そんなことはわかっているが、買い替えるとなると高いし、何より設定が面倒だ」と思っている人も多いだろう。だが、それは大きな誤解。まず、Hacの親機はもはや安価で、4000円台から買える。

親機の交換も簡単に済ませる秘策がある。従来の親機の設定を新機種にコピーする機能を使えば、パソコンやスマホなどの接続機器側の設定は変えずに、そのまま使い続けられる。

このサイトでは、パソコンやスマホをいっそう快適に使うため、Wi-Fi環境を改善する方法を紹介する。まずパート1では、Wi-Fiの理解に欠かせない知識を基礎からわかりやすく解説。続くパート2では、新しい親機を選んで古いものと入れ替えるまでの手順を詳細に見ていく。最後のパート3では電波の強度マップを作成。それを基に、11acなどの親機を使っている人が、さらに電波状態を改善できる親機の設置方法などを紹介する。

Wi-Fiをアップグレードすれば、パソコンもスマホも快適になる!
ファイルのダウンロードやパソコン間のコピーが速くなり、動画の画質が良くなる。HD動画が途切れなくなり、家中どこでもスマホのインターネットが快適になる。家族全員が一斉にネット接続しても遅くなりにくいのだ。

2.まずはWi-Fiの基本を知ろう!

どのようにWi-Fi環境の改善を図っていくかを考えるうえでも、まずはWi-Fiの基本を頭に入れておこう。特に現状に不満はないという人も基礎知識はいずれ必ず役にに立つ。将来的な親機の買い替えや万一のトラブルに備えるためにも、ぜひこのパートを一読しておくことをお勧めする。もちろん「Wi-Fiの遅い、切れるを改善したい」と思っている人には、「次の一手』を見つけるヒントになるはずだ。

Wi-Fi環境の要(かなめ)はWi-Fi親機。このパートでは、その機能を一つずつチェックしながら、環境改善を考えていこう。

◆実はWi-Fi親機の中には異なる3つの機能があった!

Wi-Fi親機は、ネットワーク機器として3つの顔を持つ(図1)。ひとつは無線LANのアクセスポイント(AP)。次にLANスイッチ。それとルーターだ。大まかにはそれぞれ、無線LAN機器との接続、有線LAN(イーサネット)機器との接続、インターネットとの接続を受け持つ(図2)。


では、無線LANのアクセスポイントとしての機能を見ていこう。無線LANは、その名の通り、従来はケーブル接続だったLANを無線にしたネットワークのこと(図3)。「Wi-Fi」は無線LANの通称なのだが、今はWi-Fiのほうが一般的になっている。
アクセスポイントは、Wi-FI機器の中心に位置する機器。これがいわゆる「親機」となる(図4)。パソコンやスマホなど、その他のWi-Fi機器は「子機」となる。子機だけではインターネットはもちろん、家庭内のネットワークにも接続できない。親機がネットワークヘの仲介役を受け持つ。
Wi-Fiに対応した子機ならば、どんな機器でも親機に接続することができる(図5)。家庭で使うWi-Fi機器はどんどん増えてきているが、親機は1台あればよい。

◆速度はWi-Fi規格で決定!11acは最速で約7ギガ!

Wi-FIの通信速度は規格で決まる。規格とは異なるメーカー間でも接続できるようにするための決め事。これに沿って機器を製造してあれば、ほほ問題なく接続できると考えてよい。
Wi-Fiの規格を決めているのはIEEE(米国電気電子技術者協会)という機関だ。ケーブルで接続する有線LANも、Wi-Fi同様、IEEEで規格化されている。
IEEEの中で、802委員会と呼ばれるグループがネットワーク関連の規格を策定する。この中の11ワーキンググループが無線LANを担当する。細かい仕様はテーマごとに設けられた作業部会(タスクグループ)で検討、策定する。これはアルファベットでグループ名を表すようになっている。Wi-Fi規格の正式名称が「IEEE802・11ac」などとなっているのは、どのグループが議論して決めた規格かを示している(図6)。
Wi-Fi規格の基本は「IEEE802・11」だ(図7)。基本的な接続手順などは今でも802・11に従っている。ただし、802・11は最大でも2Mbps。もっと高速に通信できるようにと、主に無線部分を改良するために作られたのが「IEEE802・11b」などの規格だ。以下、これらを11bなどといった略称で呼ぶ。
こうした規格はWi-Fiが使用する周波数帯である2・4GHz帯と5GHz帯それぞれで決められており、最新の規格は5GHz帯の11acだ。規格上の最大速度は6・93Gbpsだが、実際にはここまでの速度を実現している機器は、一般家庭用製品ではない(図8)。規格と製品では、速度が異なる場合も少なくない。

◆複数のアンテナで通信を大幅に高速化できる!

11nと11acについては、同じ規格に対応していても、製品によって最大速度が異なっている。これは、いずれもMIMO(マルチ・インプット・マルチ・アウトプット、マイモ)と呼ばれる技術をべ‐スにしているため。MIMOは、複数のアンテナを同時に使うことで通信を高速化する技術(図9)。使用するアンテナ本数により最大速度が変わってくる。同じ11acに対応する機器でも、最大速度が1300MbPsだったり866Mbpsだったりするのは、製品によってアンテナの数が異なるからだ。
前述の通り、Wi-Fi機器同士ならば基本規格である802・11には対応しているため、通信自体は可能。ただし、最大速度が異なる機器同士で通信する場合は、遅いほうの規格で接続する点に注意しよう(図10)。例えば、11acに対応したパソコンが11n対応の親機と通信する場合は、規格としては親機の11nでの通信になる。この親機が2本のアンテナを搭載する製品なら、実際の通信の最大速度は300Mbpsだ。お互いの規格とアンテナ数がそろっていれば、機器が対応する最大速度で通信できる。
この「異なる規格同士で通信すると、遅いほうで通信することになる」という原則は、Wi-Fi環境を見直す際の重要なポイントだ。キーになるのは親機の対応規格。パソコンやスマホは、買い替えなどにより順次高速化しているという人が多いだろう。親機が昔のままだと、子機が高速化しているのに親機だけが遅い状態になる(図11)。古い親機を使い続けていると、本当はもっと高速に通信できる子機がそろっていることに気付かず、古い親機のせいで通信速度は遅いままということも十分にあり得るのだ。

◆11n親機を11ac対応にすればファイル転送が2倍!

実際にどのくらい遠くなるのか、2012年に発売された11n親機と、2016年発売の11ac親機とて比較してみた(図12)。
11acに対応したパソコンを2台用意し、親機を介してファイルの読み出しと書き込みを実行。速度の測定にはフリーソフトの「LANスピードテストライト」を使った(図13)(注2)。その結果、新しい親機に替える効果は歴然。ファイルの転送速度が2倍以Lにアッブした(図14)。Wi-Fiの場合、ネットワーク管理用のコマンドやその応答など、転送するデータ以外にもたくさんの情報がやり取りされる。このため、規格上の速度がそのままファイル転送速度には反映されないので、ほぼ妥当な結果と考えていいだろう。
さらに高速化を図りたいなら、子機もできるだけ高速規格でそろえておきたい。Wi-Fiでは原則として1台ずつしか通信できない。いずれかの機器が通信中は、ほかの機器は送信を控え、じっと待つ必要がある。このため、せっかく親機を速くしたのに、遅い子機が混在していると、同じ量のデータを送るのでも、遅い子機のときにはより時間がかかってしまう(図15)。親機ほどの影響はないが、遅い子機が全体の足を引っ張る側面もある。
スマホやタブレットの場合は、Wi-Fi機能だけをパワーアップするのは難しい。パソコンの場合はUSB端子に挿す外部接続用の子機を使うという選択肢もある(図16)。さらに一歩踏み込んで高速化を図りたいなら、検討する価値はある。
11n対応の親機には、利用する周波数帯によって2種類がある。2・4GHz帯しか使えない11g/b/n対応機と、5GHz帯も使える11a/g/b/n対応機だ。2・4GHz帯は昔からWi-Fiに使われているうえ、ほかの機器もたくさん利用している周波数帯(図17‥)。このため、基本的に混雑している状態だ。前述の通り、同じ周波数帯を使っている通信があれば、ほかの機器は送信を控えるのがWi-Fiの基本,混雑は速度低下に即つながる。2・4GHz帯しか使えない親機なら、なおさら11ac対応機に替える価値がある

◆有線LANの規格もチェックしよう!

Wi-Fi以外の機能についても見ておこう。Wi-Fi非対応の機器は有線LANでLANスイッチに接続する(図18)。ケーブルで接続する有線LANの特徴は、1本のケーブルで双方向通信が可能なこと。Wi-Fiとは異なり、同時に複数の機器が通信できるので、効率良くデータをやり取りできる。
パソコンの場合、イーサネットは、1Gbpsの通信規格である1000BASE‐Tが主流(図19)。にもかかわらず低価格の親機だと、100Mbpsでしか通信できない100BASE‐TX対応のものがあるので、親機を選ぶ際は必ずチェックしよう。
ルーターは、異なる2つのネットワークをつないで、データの交通整理をするのが本来の役割(図20)。自宅のネットワークとプロバイダー側のネットワークの間に立つことで、プロバイダー網の先にあるインターネットを利用できるようにする。
そのために必要なIPアドレスを管理するのも重要な役割だ(図21)。プロバイダーからIPアドレスを受け取り、また、自宅側の機器に自宅用のIPアドレスを割り振る機能も担う。
ただし、プロバイダーから提供された通信機器にすでにルータ一機能が内蔵されていることもある(図22)。ルーターを二重に動作させるのはトラブルのもと。プロバイダーの機器には、ルーターに加えてアクセスポイントも備えているものもある。Wi-Fiを高速化するなら、アクセスポイントは自分で用意する親機を使うようにして、ルーターはプロバイダーの機器のものを使おう。その場合、Wi-Fi親機側でルーター機能をオフにする設定が必要な場合もある(図23)。

3.現在の親機と子機を即!確認!

Wi-FI環境を改善する手立てを考えるうえで、まずは現状を正確に把握したい。ポイントは4つ。

  • ①親機の仕様
  • ②子機の台数とそれぞれの仕様
  • ③リンク速度
  • ④ルーターの動作モード

これらを確認しておくことが、親機の買い替えを第一に考えるのか、先に通信環境の改善を図るのかといった判断の助けになる(図1)。

◆仕様が不明ならまず検索!リンク速度も設定画面で確認

まずは何より、親機の対応規格が重要だ。古い親機をずっと使っているようなケースでは、いくら.電波環境を改善しても大きな向上は見込めない。
親機の対応規格がわからないという場合は、機種名や型番などから検索してみよう(図2)。古い機種でもメーカーのウェブサイトなどで詳しい仕様を確認できることがほとんどだ。

子機についても同様に、パソコンやスマホ、タブレット、プリンターなど、使用中の機器をリストアップし、それぞれ仕様を確認しておこう。子機がいずれも古い規格しかサポートしていないならば、必ずしも親機をあわてて買い替える必要はないからだ。
ただし、スマホの場合、最大接続速度までは公表されていないことが多い点は頭に入れておこう。
続いて、今の機器がWi-Fiで通信する際のリンク速度も調べておこう。リンク速度とは、実際に無線で信号を送り合う際の速度のこと,Wi-Fiでは必ずしも常に規格上の最大速度で通信できるとは限らない。周辺のノイズや通信距離などにより、徐々に速度を落として通信する場合が多い、その結果、実際に通信するのに使われた速度がリンク速度だ。パソコンおよびスマホ、タブレットの場合、OSの機能で確認できる(図3、図4)。
選択可能なリンク速度は規格ごとに決められている(図5)。リンク速度が最大速度からどの程度落ちているかを見ることで、大まかに周囲の通信状況を知ることができる。より詳しく調べるには、パート3の通信環境改善編を参考にしてほしい。
最後に、どの機器のルーター機能を使っているかも確認しておこう。具体的には、プロバイダーから提供された機器に内蔵されたルーター機能か、自分で用意したWi-Fi親機のルーター機能を使っているかだ。基本的には既存の親機と同じ設定で入れ替えればそのまま使える(図6)。機種によっては自動判別する「AUTOモード」で使っていることもある。その場合は、ブロバイダーのマニュアルなどでの確認が必要になることがある。

4.親機は速度と価格と付加機能を要確認!

11acに対応したスマホやパソコンを使っていても、Wi-FI親機が11nや11gまでしか対応していなければ、通信速度は遅いままで接続性も良くない。パソコンやスマホをより快適に使えるように親機のアップグレードを検討しよう。

現在販売されている親機は、ほとんどが11acに対応している。それらの製品は、図1のように4つのクラスに分類できる。クラスによって最大通信速度、付加機能、価格が異なる。

◆1300メガクラスなら安心!現状では866メガでも十分

最上位の「1733メガクラス」は4本のアンテナで通信し、1733Mbpsという高速通信が可能。ただし、現時点で1733Mbps以上の通信に対応するパソコンやスマホはない。この最大速度を発揮できるのは、親機を2台用意し、1台を中継機として利用したときだけだ。機能的にも申し分ないが、価格は1万円台後半が多く、やや手を出しにくい。ちなみに、ネットギアの最上位モデルは、最新規格で採用された高効率な変調方式を使い、最大2166Mbpsを実現している。

その下の「1300メガクラス」はアンテナが3本になり、最大通信速度は1300Mbps。子機となるノートパソコンの通信速度は433Mか866Mbpsで、一部の上位モデルのみ1300Mbpsだから、性能的には十分以上。付加機能も1733メガクラス並みに充実している一方で、価格は1万円前後と手を出しやすい。

アンテナが2本になる「866メガクラス」は、通信速度が866Mbpsに落ちる。とはいえ、子機の状況を見ると、前述のようにノートパソコンは866Mbps程度、スマホやタブレットも433Mか866Mbpsだ、つまり、現在売られている子機に合わせるなら、親機は866メガクラスでも事足りる。価格は5000円〜1万円と、安いこともあり、このクラスが最もよく売れているという。

製品の出始めは高価だったHac対応親機だが、「低価格クラス」の製品は4000円台から買える。ただし、有線LANの仕様が貧弱で、必要最低限の機能しかない点には注意が必要だ。

◆通信を改善する新機能に注目!ただし子機の対応も必要

通信速度の次に注目するのがアンテナの方式。棒状の外部アンテナを備える製品と、本体に内蔵した製品がある。それぞれにメリットがある。外部アンテナは、向きを調節することで、電波が飛ぶ方向を環境に合わせて変えられる(図2)。

一方、内蔵アンテナの製品は、コンパクトで置き場所を選ばないのがメリットだ(図3)。

最新の親機が備えるさまざまな付加機能の中でも、特にビームフォーミングとMU‐MIMOは押さえておきたい。ビームフォーミングは、親機が専用の通信で子機の位匿を特定し、その場所に向けて最適な電波を送信することで、送受信状況を改善する(図4)。

ただし、ビームフォーミングは、親機と子機の双方で対応が必要。親機によっては独白の方法で子機の位置を推測し、非対応の子機でもビームフォーミングと同等の機能が利用できる製品もある(図5)。

MU‐MIMOは親機に複数の子機を接続したときの速度低下を防ぐ機能だ。これまでのMIMOでは、親機が複数の子機と通信すると、すべての子機に対して同じデータを送信し、子機が必要なデータだけ受け取る。このため、同時に通信する子機が増えると、その分順番待ちが発生し、通信速度が低下する。

一方、MU-MIMOはビームフォーミングを使い子機の位置を特定し、子機ごとに必要なデータだけを送るため効率が良い(図6)。ただし、MU‐MIMOもビームフォーミングと同様に、子機の対応が欠かせない。2017年2月中旬現在、対応するのは国産スマホの一部機種に限られる。

◆高価な製品ほど処理が速い!有線LANの速度にも注意

これまで解説してきたように、Wi-Fi親機はインターネット接続や無線通信などいくつもの役割を担っており、付加機能も多い。さらに、通信の高速化と接続子機の増加により、親機が処理すべき仕事量はますます増えている。このため、高価な上位機種では処理性能が高いCPUを採用し、負荷の増大に対処している(図7)。

有線の最大速度もチェックしよう。低価格クラスの機種は、最大速度が100Mbpsと遅いものがほとんど,これではインターネット回線が1Gbps以上の高速回線だったとしても、その速度をまったく生かせない。

もう一つの有線端子であるLAN側が100Mbpsの場合は、親機に有線で接続したパソコンの通信速度が低く抑えられてしまう(図8、図9)。こちらもチェックが必要だ。

既存の親機を新機種に入れ替える際は、「引っ越し機能」があると便利。既存の親機の基本設定を、簡単な操作で新しい親機に引き継げる。親機の無線設定をそのまま引き継ぐので、子機を設定し直さなくてもよい(図10)。

こうした最新の製品動向を踏まえ、主な親機の性能と機能をチェックしよう(図11)。次のパートでは、どんな人にどのクラスの製品がよいか診断する。

 

 

5.あなたの使用環境に合った親機を選ぼう!

11ac対応のWi-FI親機は数千円で買えるものから2万円近いものまで幅広いラインアップがある。同じ11ac対応でも最大通信速度に差があり、搭載している機能も異なる。自分はいったいどれを買ったらよいのか迷う人は多いだろう。そこで、ここでは3種類の環境を例に、どのクラスの製品が適しているかを見ていこう(図1)。

◆子機の台数が少なければ低価格クラスでも十分

まず、ワンルームマンションに一人暮らしで、パソコン、スマホ、タブレットという3台の子機をつなぐ場合はどうだろうか(図1の①)。
六畳1室なので電波を遠くに飛ばす必要はない。接続する台数が少なく1人だけなので、同時に多数の通信が発生することはほとんどなく、親機の負担は軽い。また、すべての子機が無線で接続できるため、親機にギガビット対応の有線LAN端子は必要ない。
こうした使い方なら、「低価格クラス」で十分(図2)。アンテナ2本で最大866MbPsの製品でも4000円台で買える。ただし、このクラスの製品を選ぶときは、WAN側の有線LAN端子の速度をチェックしよう。前にも説明したように、WAN側のLAN端子が100Mbpsだと、高速なインターネット接続サービスを利用していても、メリットを生かせない。その点は割り切りが必要だ。

◆接続する子機が多いときは1733メガクラスで決まり

次に、3LDKに住む4人家族に最適な製品を考えてみよう(図1の②)。家族がそれぞれパソコンやスマホを使い、それ以外にもWi-Fiを使う機器があるため、子機は合計で20台と多い。
複数の子機が同時に通信する時間が長く、高画質(HD)動画ストリーミング視聴といった大量のデータ通信を伴う使い方もするため、親機には高い通信速度と処理性能が必要。4本のアンテナと高速CPUを搭抜した「1733メガクラス」の製品から選ぶのが安
心だ(図3)。

◆3階まで電波を飛ばすなら上位クラスの製品が断然有利

最後は、3階建てのコンクリート造りの住宅(図1の・)。親機を1階に設置すると、3階まで電波が届きにくい。どんな親機を選ぶのがよいだろうか。
親機が出す電波の出力は法律で上限が定められているため、製品による違いはない。電波の届きやすさは、アンテナと送受信装置の性能で決まる。そこで有利なのが、広範囲に.電波を届かせる装備を持った「1300メガクラス」と「1733メガクラス」の製品(図4)。最大速度が高いため電波が弱くなったときも実用的で、電波のに干渉を回避する機能を搭載した製品もある。アンテナが外付けのモデルなら、向きを変えて、電波が上下方向に強くなるよう調節することも可能だ。
家の構造などによって、親機の電波の飛び方はかなり異なる。各メーカーによると、コンクリート造りの建物の場合は、1階から3階まで電波が届かないことがあるという。通信が途切れたり遅くなったりする場合は、中継機を2階に設置するとよいという。専用の中継機を追加するほかに、同じ親機を2台用意して、1台を中継機として使う手もある。

6.親機カンタン交換法を公開!

ここからは、実際にWi-Fi親機を交換する方法を見ていこう。ポイントとなるのは「引っ越し機能」だ。これは、前の親機のSSIDと暗号キーを新しい親機にコピーする機能のこと。これを使うことで、親機の入れ替え時に生じる設定変更の手間を大幅に低減できる(図1)。

◆親機の設定を自動コピーすれば複数の子機でもOK!

何もせずに親機を入れ替えた場合は、接続する子機であるパソコンやスマホ、タブレットなどの接続設定をすべてやり直す必要がある。最近は家族の人数分だけスマホがある家庭が多く、パソコンに加えてプリンターやゲーム機などもWi-Fiでつながっているため、相当な手間がかかる。

一方、引っ越し機能を利用すればSSIDと暗号キーは変わらないので、子機側の設定変更は一切必要ないというわけ。親機交換のハードルが一気に低くなる。

ただし、引っ越し機能を利用するには、これまで使っていた親機が「WPS(ダブリュピーエス)」と呼ばれる自動設定機能を備え、新しい親機にはこの引っ越し機能が搭載されていることが条件だ(図2)。WPSは10年以内に購入した親機なら標準装備されているため、実質的には新しい親機が引っ越し機能を備えていればよい[注]。図3に、引っ越し機能を持つ主な機種をまとめた。

たとえ前記の条件を満たさない場合でも、次善の策がある。新しい親機を設置したら、そのSSIDと暗号キーを前の機種と同じものに書き換えてしまえばよい。そうすれば、引っ越し機能と同様、子機の設定変更は不要だ。

ところで、引っ越し機能を使ってコピーできるのはSSIDと暗号キーだけなのは覚えておこう。例えば、前の親機の独白機能を使って子供のパソコンにネットの利用時間制限を設けていても、その設定は引き継がれない。

ここからは、具体的な手順を見ていこう。取り上げるのは、引っ越し機能を使う方法(ケースA)、新しい親機を設置してSSIDと暗号キーを元のものに書き換える方法(ケースB)、新しい親機を設置して子機の設定をやり直す方法(ケースC)だ。

ケースAでは、代表的なメーカーであるバッファローとNECブラットフオームズの製品を取り上げる。いずれも、・新しい親機で設定の受け入れ準備、・前の親機から設定を送信、・前の親機を新しい親機に入れ替え、・PPPOEの接続設定という手順になる 。

◆引っ越し機能でバッファローの親機の導入の仕方

まずは、バッファローの製品について説明しよう(図4)。最初は新しい親機での受け入れ準備だ。背面のモードスイッチを「AUTO」に設定し、ACアダプターを接続し電源を入れる(図5左)。次に、前面の「AOSSボタン」を長押しすると、前面のランプが図5の⑤の状態になる。これで準備は完了だ。

次に、前の親機のWPSボタンを押して設定を送信する(図6)。新しい親機が設定を受信すると、前面のランプが図7の①の状態になる。しばらくすると、前の親機もバッファロー製であれば③の状態に、そうでなければ②の状態になる。②になったときは2・4GHz帯の設定しかコピーされていないが、もう一度WPSボタンを押すと5GHz帯の設定もコピーされる。③の状態になったら、AOSSボタンを2秒問押し続ければ設定コピーは完了だ。

続いて機器本体の入れ替えだ。新旧2つの親機の電源をオフにしたら、回線終端装置から前の親機につながっているLANケーブルを新しい親機につなぎ替える(図8)。新しい親機の電源を入れ、パソコンのウェブブラウザーを起動しよう。インターネットに接続できれば交換は完了だ。

ただし、インターネットプロバイダーがPPPOEと呼ばれる通信プロトコルを採用している場合は、最後にプロバイダーヘの接続設定が必要だ。ウェブブラウザーを起動したら、所定のユーザー名とパスワードを人力して親機の設定画面にログインする(図9、図10)。最初に表示される画面でプロバイダーに接続するためのIDとバスワードを設定しよう(図11、図12)

◆NECの最上位機種へ前の親機から設定の移し方

次に、NECプラットフオームズの親機で引っ越し機能を使う手順を見ていこう(図13)。

まずは、新しい親機での設定受け入れ準備だ。モードスイッチを「CNV」に設定し、「らくらくスタートボタン」を押しながらACアダプターを接続する。「CONVERTER」ランプが緑に点滅したら指を離し、もう一度同じボタンを長押しすると、「POWER」ランプが緑に点滅する(図14)。

次に、前の親機のWPSボタンを長押しして設定を送信する(図15)。すると、新しい親機の「POWER」ランプが橙に点灯し、「2・4GHz」「5GHz」ランプが緑に点灯する(図16)。これで転送は完了。ただし、以前の親機がデュアルバンド機能に対応していない場合は、どちらかが赤で点灯する。その場合、赤点灯したほうの周波数帯の設定はコピーされていないため、手動で変更する必要がある。

続いて、親機を交換する。両方の親機の電源をオフにし、回線終端装置から親機につながっているLANケーブルを新しい親機につなぎ替える(図17)。これで入れ替えは完了だが、PPPOE接続の場合は、プロバイダーヘの接続設定が必要だ(図18、図19)。

◆引っ越し機能がない親機のSSIDの書き換え方

次に、ケースBについて解説しよう。新しい親機の設定を置き換えることで、子機の設定変更を不要にする方法だ。ここでは、NECプラットフオームズの親機で説明する(図20)。

このケースでは、設定を変更する間だけ、新しい親機とパソコンをLANケーブルで接続するとよい。そうすれば、新しいSSIDには一度も接続しなくて済む(図21)。

背面のモードスイッチは、RTモードに設定する。らくらくスタートボタンACアダプターを接続し、前面のランプがすべたみどりに 点滅したら指を離す。これで、親機として使える準備ができた(図22)。ただし、プロバイダーのPPPoEの場合、その後ですべてのランプが橙に点滅する。その場合、プロバイダーへの接続が必要だ(図23~図26)。

次に、SSIDと暗号キーを前の親機と同じものに置き換える。親機の設定画面の開き方は、親機の動作モードによって異なる。PPoEルーターの場合、図26の後で作業すればよい。ローカルルーターモードの場合、本体前面のランプのうち上から二つ目の「ACTIVE」ランプが緑に点灯または点滅、あるいは消灯のいずれかになる。その場合は図23、図24と同じ手順で設定画面を開ける。

一方ブリッジモードの場合は、ACTIVEランプが橙に点灯している。この場合、一度ACアダプターを接続し、「CONVERTER」ランプが緑に点滅したら指を離す。次にウェブブラウザーのアドレス欄に「http://192.168.1.210」と入力すると図23の画面が開く。

設定画面が開いたら、2・4GHz帯の設定を開き、SSIDと暗号キーを書き換える。同様に、5GHz帯の設定も書き換えよう(図27)。ブリッジモードの場合、両方のSSIDと暗号キーを書き換えた後、設定画面の「メンテナンス」→「再起動」を選んで親機を再起動する。これで設定は完了。パソコンのLANケーブルを外しても、新しい親機と無線で接続できる。

ケースAとケースBで、設定を書き換えると、新しい親機のラベルなどに書いてあるSSIDと暗号キーとは異なる設定になる。新しい子機を接続する際などに困らないように、ラベルにSSIDと暗号キーを記入して本体に貼り付けておくと安心だ(図28)。

◆前の親機を中継機として活用する方法

ケースCは、元のSSIDを流用せず、新しい親機の設定を変えずに使う方法。この場合、これまで使っていた子機は、すべて接続設定をやり直す必要がある。その手順は後ほど解説する(図29)。

ところで、入れ替えた親機は、機種によっては中継機として再利用できる。電波が届きにくい部屋があるときは効果を発揮する(図30)。

ただし、すべての親機が中継機になるわけではない。主要メーカーではおおむね2012年以降に発売された機種が中継機能を備えている。ただし、初期の製品は新旧の親機が同じメーカーでないと中継機として使えないものもある。手元の機種の機能を調べてみよう(図31)。設定方法は機種によって異なる。図32では、NECプラットフオームズの占い機種の概略手順を示した。

 

7.パソコン・スマホの親機へのつなげ方

ここではノートパソコンやスマホなどの子機を親機に接続する方法を取り上げよう。まずは、どんなときに子機設定が必要になるか整理しよう。

ここまで述べてきたように、引っ越し機能を使ったり手動で設定変更したりして、SSIDと暗号キーを旧機種から新機種に引き継いだ場合、子機側の設定変更は不要。しかし、その場合でも新しく子機を追加した場合は、

もちろん子機の設定が必要だ。一方、SSIDと暗号キーを引き継がなかった場合は、すべての子機について設定変更が必要になる(図1)。

子機の接続設定をする方法は2種類。一つはWPSを使った自動設定、もう一つは自分で暗号キーを入力する手動設定だ。ただし、すべての端末で自動設定が利用できるわけではない。ノートパソコンとアンドロイド端末はWPSに対応しているが、「iPhone」「iPad」などのiOS端末はWPSに対応していないため手動で設定する必要がある(図2)。

◆自動設定を使えば暗号キーの入力は不要

それでは、具体的な手順を見ていこう。最初はパソコンの設定方法だ。ウィンドウズ10と7について紹介する。まずは、WPSを使った自動設定から紹介しよう。

ウィンドウズ10の場合、タスクトレイの接続アイコンをクリックすると、周囲にある親機のSSIDが一覧表示される。自分の親機のSSIDを選択し、「自動的に接続」を有効にして「接続」ボタンをクリック(図3)。

次に、暗号キーの設定画面が出てくるが、入力の必要はない。親機のWPSボタンを押すと自動で設定される(図4、図5)。その後、ネットワークの設定画面が表示される。家庭や職場で使うときは「はい」をクリックし、ほかのパソコンとのファイル共有などができるようにしておくと便利だ(図6)。

ウィンドウズ7の場合も、画面表示が少し異なるものの、ほぼ同じ手順で自動設定できる(図7~図10)。

万一、自動設定がうまくいかないときは、略号キーを自分で入力して設定しよう。ウィンドウズ10の場合、先ほどと同様に自分の親機のSSIDを選び、空欄に暗号キーを入力すればよい(図11図12)。ウィンドウズ7の場合もやり方は同様だ(図13、図14)。

◆アンドロイド端末は自動設定で簡単に接続

次に、スマホやタブレットの接続方法を見ていこう。アンドロイド端末はWPSを使った自動設定機能が使える。設定画面を開いたら、「 Wi-Fi」をタップ(図15、図16)。メニュー画面から「詳細設定」を開き、「WPSプッシュボタン」を選択する(図17~図19)。すると、接続方法の説明が表示されるので、親機のWPSボタンを押せば設定は完了だ(図20、図21)。

自動接続がうまくいかないときは手動で設定する。Wi‐Fiの両面を開いたら、接続したいSSIDを選び、空欄に暗号キーを入力しよう(図22、図23)。

iOS端末の場合、WPSは使えないので手動設定になる。設定画面で「Wi‐Fi」をタップし、接続したいSSIDを選択して暗号キーを入力すればよい(図24~図27)。

 

 

8.ノートパソコンを11ac対応に高速化!

WiFi親機を11ac対応の最新モデルに入れ替えても、パソコンが非対応だと性能を生かせない。ノートパソコンの場合、10年ほど前の製品は11nにすら対応していない。5~6年前の製品は11nに対応しているものの、周波数帯は2.4GHz帯だけで、最大通信速度は150MbPsという機種も多い。

こうしたパソコンは、11ac対応のUSB子機でアップグレードしよう。実際、11nのWi‐Fi機能(内蔵子機)に対し、11ac対応子機はファイルの転送速度が約7.4倍も向上した(図1)。

◆古い内蔵子機は停止してUSB子機を使えばOK

ここでは、11ac対応で最人速度866MbpsというバッファローのUSB子機の例を紹介する(図2)。

導入方法はいたって簡単だ。製品に付属するCD‐ROMからツールを起動し、画面の指示に従って必要なソフトをインストールする(図3)。途中で、内蔵子機の機能をオフにするように指示されるのでそれに従って操作する(図4)。USB子機は画面の指示があってから取り付ける(図5)。設定にはWPS機能が使えるので、暗号キーを入力する必要はない(図6、図7)。

9.高速化と安定化は電波の見える化で解決!

高速インターネットにWi-Fiでつないでいるが、どうも速度が遅い、いつの間にかスマホのWi-FIが切れてLTEになっているー。こんな悩みを、どこまで改善できるか、3つの方法で検証した。

◆木造2階建てで実際に検証!簡単な手法でも効果あり

検証した環境は、木造2階建ての住宅。1階の床に設置した親機の電波が2階の一部の部屋では弱く、通信速度が遅かったり、接続が切れたりする症状が出ていた。

使っているWi-FI親機は、光回線の通信事業者からレンタルしている古めの機種だ。対応しているWi-Fiの規格は802.11nまでで、通信速度は最大450Mbpsと、11acが一般的な今の基準で見るとかなり遅い。

試したのは、まず親機の置き場所を変えること。2階に電波が届きやすくなることを狙い、親機を1階の床から棚の上に移動することで、天井に近づけてみた。これだけで、図1のように2階の電波が弱い領域が減り、良好な緑色の範囲が増えた。

さらに根本的な改善を目指して中継機を追加したところ、通信速度が2倍になるなど、大きく改善した(図2)。また、アンテナを動かせるタイプの親機に交換し、アンテナの向きで電波状況が変わるかテストしたところ、通信速度が大きく変化することもわかった(図3)。

◆電波強度の分布を〝見える化〟

通信環境の改善に収り組むには、まず状況を客観的に把捉するためのツールが必要だ。電波の強度を測るツールとして、アイ・オー・データ機器が提供しているスマホアプリ「Wi-Fiミレル」を使ってみよう(図4)。

スマホが接続している親機の電波強度やリンク速度などがわかる。それに加えて、間収り図の上に電波強度を色分けして示した「ヒートマップ」を作れるのが特徴だ(図5、図6)。電波の強いところは緑、中ぐらいが黄、弱いところは赤で表示される。家の中でどこの電波が弱いのか、ひと目でわかるため、対策を立てたり、その効果を確かめたりするのに役立つ。

 

初めに、家の間取り図をスマホのカメラで撮影して取り込んでおく。電波強度を測定したい場所に移動し、間取り図上のその位置をタップして測定する。これを、場所を変えながら何度か繰り返せばヒートマップが出来上がる。親機を置いた場所はアイコンを変更してわかるようにしておこう。

また、「混雑」のタブでは、自分が使っている親機だけでなく、周辺で使われているWi-Fiの電波をチャンネルごとにビジュアルで表示する(図7)。一般に2.4GHZ帯は混雑していて、5GHz帯は空いている傾向があるが、実際の混雑貝合を確認できるメリットは大きい。周囲でWi-Fiを使っている人がいない場合など、2.4GHz帯が空いていれば使っても問題はない。

もう一つのツールは、通信速度を測定するアプリの「スピードテスト」(図8)。インターネットまで含めた通信速度だが、簡単な操作で次々と計測できる点が使いやすい。

◆親機を床から棚の上に移すだけで高速化!

まず1階の床に置いていた親機を、ほぼ同じ場所で、天丼近くの棚の上に移動した。その前後のピートマップと、通信速度は図9の通り。2階の電波状況は5GHZ帯、2・4GHZ帯ともに、緑の良好な範囲が広かった。テストに使った住宅では、これまで5GHZ帯は通信速度は速いものの、時折不安定になって切れることがあったため、比較的安定して通信できる2.4GHz帯をあえて使っていた。

親機の置き場所を1階の天井付近に変えただけで、2階でも5GHz帯が問題なく使えるようになった。変更前に速度の遅かった場所では、親機の移動後に通信速度も上がっており、通信が安定したことを示している。

1階での電波状況の変化はわずかだが、やはり通信速度が遅かったところは改善している。同じ1階でも、より高い場所に親機を置くと、電波は床に置いてある家具などに邪魔されることがなくなるので、子機まで届きやすくなったと推測できる。

こうした変化は、住宅の構造や周囲の状況などに大きく左右されるため、どの家でも同じ結果になるわけではない。しかし、親機の位置によって電波の届き方に変化が出るのは間違いないので、試してみる価値はある。

 

10.中継機を効果的に使って電波を安定させる!

親機の置き方で電波状況が改善したものの5GHz帯では2階の広い範囲でまだ電波が弱い(図10)。特に和室と洋間の隅は電波が弱かったので、中継機を追加して効果を確認した(図11)。

初めに中継機の置き場所を検討しよう。親機からの電波を強く受信できる場所で、なおかつ中継機から目的の部屋にも電波が届きやすそうな場所を見つける必要がある。

そのため、今回は先ほどのスマホアプリ、スピードテストを使い、候補の2ヵ所で計測した。

まず、親機の近くで速度計測してみる(図12)。 この5GHz帯で102MbPsという速度がペストの値なので、できるだけこれよりも落ちない場所に中継機を置きたいところだ。

候補点1は、親機を置いた場所の天井と床を挟んだすぐ上。しかも2階のほぼ中央なので、すべての部屋に満遍なく電波が届きそうだ。ここでは5GHz帯で105Mbpsと速かった親機の近くよりも良い計測値だが、これは誤差の範囲だ。

候補点2は階段付近なので、床や天井を通さず親機の場所をほぼ見通せる。だが、計測してみると5GHz帯で97Mbpsとやや速度は落ちた。

そこで、中継機を候補点1に設置してみた。すると、図13のピートマップでもわかるように、2階の全域に強い電波が届くようになり、通信速度も上がった。

◆中継に使う電波も2.4ギガと5ギガがある

中継機は、低価格帯の製品や古い製品以外は、2.4GHz帯と5GHz帯の両方の周波数帯を使えるようになっている。こうした中継機では、親機と中継機の間の通信にどちらの周波数帯を使っていても、子機は両方の周波数帯が使えるようになっている機種が多い。

この場合、親機と中継機の間は子機が使わないほうの周波数帯を使うように設定しておくと、全体として高速で通信できる可能性が高い。親機からの中継と、子機との通信に使う周波数帯が異なれば、中継機は両方の周波数帯でそれぞれ最大の通信速度を出せるからだ(図14)。

◆実はアンテナの向きも電波状況に影響する

アンテナを動かせるタイプの親機を使っている場合は、方向を変えることで電波の届き方を変えられる。

ここまで使ってきた親機はアンテナ内蔵タイプなので、バッファローの「WXR‐1750DHP」を用意し、1階の床に置いて実験した。

古い親機を床に置くと、2階の部屋の隅では通信が途切れることすらあった。一方、新しい親機の威力は大きく、アンテナをどの方向に向けても、2階のすべての部屋で電波が強力に届き、高速な通信ができた。

今回、この状況ではアンテナの向きによる変化を検証できないため、あえて親機の電波の出力を50%に減らしてテストしてみた(図15)。

アンテナをすべて垂直に立てた状態を「ノーマル」として、2階の「子機に対して直角」「子機に向ける」の計3種類の状態を比べた。アンテナの特性から、直角にすれば電波は強くなり、子機に向けると電波は弱くなることを意図した実験だ。ノーマルの通信速度を100として、子機に対して直角のときと、子機に向けたときの速度を割合で示したのが図16のグラフだ。

子機に対してアンテナを直角にしたところ、5GHz帯ではほとんど変化がなかったものの、2.4GHz帯では2倍近く通信速度が向上した。電波なので計測のたびにばらつきは出るものの、アンテナを直角にすると2.4GHz帯ではノーマルよりも速度が上がる傾向があった。

次いでアンテナを子機に向けたところ、5GHz帯ではわずかに悪くなったが、2.4GHz帯ではノーマルより速度が上がった。

親機は1階にあり、2階で速度を計測しているため、電波は天井や床などを通過したり、壁に反射したりして複雑に進む。こうした事情があるため、必ずしも理論通りの結果にならなかったと推測できる。つまり、アンテナの向きによって電波が飛びやすい方向は意識しつつも、実際には試行錯誤して、使いたい部屋で一番良い状態になるようにアンテナを調整するほかない。

ちなみに、アンテナを動かすと、目的の場所以外での電波状況も変化した(図17)。今回のテストでは極端に悪くなることはなかったが、ほかの部屋の電波状況も見ながらアンテナの向きを決める必要がある。

◆最新の機種にすれば親機も子機も効果絶大!

ここまで、占い親機の置き方を変えたり、中継機を追加したりして通信環境の改善を試みてきた。最後に、参考として新しい親機に入れ替えた場合、実際の住宅で電波状況や通信速度がどれくらい変わるか確かめた。

親機をアイーオー・データ機器の「WNPR2600G」に替えると、ピートマップに赤いエリアはほとんどなくなった(図18)。通信速度も向上した。古い親機では、5GHZ帯で100MbpS程度が上限だったが、同じ子機を使っても最大180MbpSを記録した。さらに、子機も新しいスマホに替えて計測したところ、1階では262MbpSという高速な通信ができるようになった。

新しい親機の性能や機能を考えると、この住宅の場合、中継機を追加するよりも親機を買い替えたほうが効果は高いといえる。